デマの心理

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その1      コロナ騒動 ~デマの心理学~      2020. 3. 10

曖昧な状況が心の不安を拡大感染させていく             
あさ心理室

 デマとは
 デマゴキーというドイツ語 Demagogie から作られた言葉で、
もともとは政治的な意図から流す嘘をいいますが、
そこから転じて一般的に「根拠のない流言」のことをいいます。

 得体のしれない新型コロナウィルスによって、
いろいろなデマが世間の中で飛び交っています。
       中国からの輸入ができずトイレットペイパーが品薄で手にはいらなくなる。
       27度の熱湯を飲むとコロナウィルスを殺菌できる。
       ごま油を体に塗るとコロナウィルスが体内に侵入することを防ぐ。
       花崗岩を持っているとコロナウィルスを殺菌できる。
などなど。 いずれも根拠のない噂であり、デマでしょう。

 

曖昧さがもたらす現象

 釘原直樹氏の「グループ・ダイナミックス 集団と群衆の心理学」に、
流言やデマがどのような時に発生しやすいのか述べられています。
災害など異常事態の発生に際して、人々が財産や生命の危機に瀕しており、
人々の関心が高まっているのに、マスコミや国からの公式な情報が少なすぎる時に
デマは広がりやすいようです。

 デマについての研究者として有名なオルポートとポストマンの古典的な著書に
「デマの心理学」があります。
それによると、デマが広がる量(R)は、その人にとっての重要性(Important)と
情報の曖昧さ(Ambiguity)の積に比例するとあります。
彼らの考えたデマの基本公式は R=I×A として表されます。
つまり、伝わってきた情報がその人にとってあまり重要ではなく、
あまりにもその根拠に関して誰に聞いてもあきらかな事実がある場合は
デマが流れにくいのでしょう。

生き残りをかけた共同作業

 シブタニ・タモツという日系アメリカ人の社会心理学者は、
その著書「流言と社会」の中で独自の流言理論を出しています。
デマとは、人が「曖昧な状況」に巻き込まれたときに、
その曖昧さに意味を与える、人と人との「共同作業」であるとされています。
この理論によれば、
わけのわからない状況で何とか自分たちの不安に折り合いをつけるために、
自分たちが考えられることを総動員させる必死の生き残り作戦と考えられます。

感染症とデマ

 大地震や戦争も大変恐ろしいものですが、
それと同じく感染症も人や社会を混乱に陥れるものです。
村上幸史ら集団心理学の研究者が O157 や SARS の大流行の分析を通して、
マスコミなどによるイメージ形成が
デマによるパニックに大きく影響を与えていると主張しています。

またこのようなパニックの中では、特定の個人や集団がスケープゴートとされやすく、
多くの人々の不安や怒りなどをぶつける対象とされてしまい
攻撃される危険性も見逃せません。
精神分析でいう「投影」というメカニズムがそこに起きています。
ウィルスにかかって苦しみ命の危険があったら困るという不安や恐れがおきます。
その不安を誰かをターゲットにしてぶつけることで、
自分とは別の誰かの属性としてしまうのです。
そしてそのターゲットとなった誰かを攻撃することで、
自分は恐れの源泉をコントロールして処理した気持ちになり、
かりそめの安心を手に入れようとする心の動きと考えられます。

 テレビの報道で、「60代男性の感染がわかり、
その人がクルーズ下船後スポーツジムに出入りしていたことが判明」と流れました。
このニュースの元で、クルーズ船に乗ったこともなければ、スポーツジムにも行っておらず、
もちろんコロナウィルスにも感染していないある会社の社長について
「あの人が怪しい」といううわさが流れ、
会社や自宅に非難の電話が殺到したという事件があったようです。

電車に乗ると、コロナ感染よりももっと怖いのは、
咳をした時の他の人たちからの刺すような視線であるという声も聴きます。

 今一度、今自分は何を怖がっているのか、そして何を知っていて何を知らないのか、
冷静に立ち止まってみたいものです。

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